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The History and Future

01 英国造船の栄光と崩壊

他人事ではない“反面教師”

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19世紀から20世紀初頭にかけて、英国は「世界の造船所」として名を馳せました。技術・産業・輸送のすべてにおいて他国を圧倒し、造船大国としての地位を確立していました。しかしその栄光は長く続かず、いくつかの構造的要因が産業の衰退を招きました。

英国造船が衰退したと考えられる構造的要因

1. 技術革新の遅れ

石炭から石油への燃料転換対応が遅れ、世界の潮流から取り残された。

2. 国際競争力の喪失

アジア諸国の台頭により、価格・品質両面での競争に敗れた。

3. インフラ老朽化

近代化投資の停滞が建造能力と生産性の低下を招いた。

4. 労使関係の悪化

ストライキの頻発や労働組合間の対立により現場が混乱。

5. 政府融資支援の消極化

外国船主への信用供与を制限(政府は英国の造船が受注できない理由を、信用供与の問題ではなく、船価と納期の問題と考えた)。

6. 経済構造の変化

製造業から金融・サービス業へと主軸が移り、造船業への国民的関心が薄れた。

注)出典は、「欧州における造船業・舶用工業会の変遷と関連政策の変遷調査(2021年3月:一般社団法人日本中小造船工業会、一般財団法人日本船舶技術研究会)」の文献を参考にGSCで整理。

かつての造船大国、英国造船業の衰退(世界シェアの低下)

注)同文献の第2章英国4P図2-2「英国造船業の建造量(総トン)の世界シェアと欧州シェア」のグラフを流用しGSCで整理。

これらは、現在の日本が直面する「技術断絶危機」「韓国・中国と比較した場合の新燃料船の受注対応遅れ」「造船人材の後継者不足」「インフラの老朽化」「日本の中での新燃料サプライチェーン供給体制の構築遅れ」等と重なります。 今、同じ道を歩まぬためには、官民連携による長期戦略の再構築と、産業間連携を促進する“共創の場”が必要です。
要約すると、産業革命を牽引した英国は、造船でも圧倒的な存在感を持っていましたが、技術革新の停滞・技術者の減少・コスト競争の劣後等により衰退しました。 英国の失敗は、危機や変化が徐々に進む中、異常に気付かず、手遅れになるまで対応しないという、まさに「茹でガエル」状態であったと考えられます。今の日本も同じ轍を踏みつつありますが、日本は、英国の二の舞を避けなければなりません。そのためには、「共創」を基軸とした官民連携による産業戦略の再構築が不可欠です。

英国の造船衰退時と現在の日本造船業との共通点

1. 技術革新の遅れ(新燃料船対応)

2. 人材の高齢化と後継者不足

3. 造船設備の老朽化と再投資の停滞

4. サプライチェーン構築の遅れ

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